「オシリス」と言っても、エジプトの神々にご興味のない方にはどんな神様か全く分からないと思います。
今日は、そんなエジプトの神々の事をお伝えしようと思います。
結構、人間(神様)関係はドロドロしています。。
ヘリオポリス神話では、原初の水「ヌン」から「アトゥム神」が出現し、この宇宙を創造しました。
アトゥム神は両性具有の神で、
●大気の神「シュー」と、
●湿気の神「テフヌト」を産みました。
このふたりは夫婦となりました。
そして、「シュー」と「テフヌト」の間に生まれたのが
●大地の神「ゲブ」と、
●天空の女神「ヌト」でした。
「ゲブ」と「ヌト」が抱き合っている所を無理矢理「シュー」によって引き離され、天と地が分かれたとされています。
天「ヌト」は指先と足先だけで大地「ゲブ」に触れ、弓なりになった腹部に星が輝き(天の川)、大氣「シュー」がこれを支えている図⬇︎
ゲブと離れてもヌトの胎内では、子供が育っていました。
祖父の「アトゥム」は、ヌトに「1年の内のどの日にも子供を出産してはならない」と告げます。
そこで月の神「トト」が5日の閏日を作り、「ヌト」は、この間に4人の子供たちを産み落としたのです。
トト神⬇︎
◆「オシリス」
◆「イシス」
◆「セト」
◆「ネフティス」
この4神は、「オシリス&イシス」「セト&ネフティス」の組み合わせで夫婦となりました。
やがて「太陽神ラー」が王位を「オシリス」に譲ります。
オシリス神⬇︎
セトは、王位を自分の物にするために、産道ではなく母親の「ヌト」の脇腹を突き破って誕生したとも言われています。
セト神⬇︎
しかし「オシリス」の方が先に生まれてしまったために、「セト」は王位を得られませんでした。
最初は、兄弟で仲良くエジプトを治めていましたが、セトの妻「ネフティス」がオシリスと不倫したりして、ふたりは次第に険悪になってしまったようです。
ネフティス女神⬇︎
というのも、ネフティスがセトと子供を作ろうとするも拒まれた為、オシリスを酒で酔いつぶして彼との子どもを身篭もったのです。
その子供が「アヌビス」です。
アヌビス神⬇︎
そんなことでセトは、オシリスを憎むようになり、彼から王位を奪おうと考えるようになりました。
ある日、オシリスが館を留守にしている間にセトは、72名の廷臣達と暗殺計画を練ります。
そして、オシリスが帰って来た時、「木棺にピッタリ入った者には、褒美として棺が贈られる」という催しがあることを告げます。
この木棺は、オシリスの体に合わせて作っておいた物だったのですが、何も知らないオシリスは、棺の中に横たわり、ちょうど良いサイズの棺に喜んでいました。
その瞬間、オシリスが抵抗する暇もなく蓋がされ、隙間には鉛が流し込まれてしまったのです。
やがてオシリスが入った棺は、セトたちによってナイル川に流されてしまうのでした。
オシリスの妻イシスは、心を痛めオシリスを探しに出かけました。
イシス女神⬇︎
オシリスの入った棺は、地中海に出てビブロスに流れ着いていました。
棺は、その場所に生えたヒースの木に包みこまれ、そのまま加工され宮殿の柱になっていたのです。
なのでイシスは、魔術を駆使して王子の乳母に成りすまし、ビブロスの宮殿に潜入することにしました。
イシスは、お世話をしていた赤ちゃんを不死にするため炎の中に入れてから、ツバメに変身してオシリスの入っている柱の周りを飛び回りました。
ある日、王子の部屋を訪ねて来た王妃がこの様子を見て驚いたのは言うまでもありません。
イシスは、元の姿に戻って素性と事情を話し納得してもらい、オシリスの入った柱をエジプトに持ち帰り、秘密の場所に隠しました。
しかし、それを知ったセトは、執念で棺を探し出すと、オシリスの遺体を14の部分に切断してしまいます。
そしてバラバラになったオシリスをエジプト中にばら撒きました。
現在も、オシリスの身体がばら撒かれた場所が聖地になっています。
アビドスに頭、ブシリスに背骨、アトリビスに心臓、ビガとエドフには、足が落ちたと言われています。
イシスは、再びオシリスの救出に出向き、パピルスの舟で遺体の断片を探し出し、強い魔力でその身体を繋ぎ合わせました。
ミイラ作りの神アヌビスは、オシリスの身体を繋ぐのを手伝い、「セベク」は、ナイル川に落ちたオシリスの死体を回収するのを手伝いました。
セベク神⬇︎
さらに「トト」とネフティスがオシリスの傷を治療したと言われています。
しかし、ナイル川に生息する魚・オクシリンコスにオシリスの大事な部分は飲み込まれてしまい見つからなかったのです。
不妊症だったセトとは対照的に、オシリスと接する女性はことごとく身ごもったそうです。
不完全な体だったためオシリスは、現世にとどまれず、止む無く「冥界の王」として蘇ることになりました。
大事なものが見つからなかったのも、セトの嫉妬心や、冥界で沢山子供を作られたら、ややこしい事になって困るからだったのかも知れませんね。
人工の「代理品」で復活の儀式をしているレリーフ⬇︎
(このレリーフは、セティ1世の葬祭殿の「オシリスの間」にあります)
その後もセトは、オシリスとイシスの息子「ホルス」も殺そうと考えました。
ホルス神⬇︎
イシスは、ホルスを守ろうと魔術を使ったのですがセトには敵わず、ホルスは殺されてしまいます。
けれど、再びトトがホルスを助け、生き返らせることに成功しました。
やがて成長したホルスは、叔父セトへの復讐を決意しました。
長い間、ホルスとセトは激しい戦いを繰り広げ、その争いの最中、ホルスは左目を失ってしまいます。
この左目は、長い間、エジプト全土を旅し、様々な知見を得てきたそうです。
この左目「ウアジェトの目」は、知恵の神にして月の神・時の神であるトート神によって癒され、ホルスの元に戻り回復しました。
この目は今でも「全てを見通す知恵」や「癒し・修復・再生」のシンボルとされています。
ちなみに、右目は太陽を象徴する「ラーの目」となりました。
やがてオシリスは、トートと相談の結果、地上の王権をホルスに譲位することができました。
これ以来、地上を統治するファラオは、「ホルスの化身」と見なされるようになったとの事です。
母イシスに抱かれ授乳されている幼いホルス像⬇︎
この特徴的なシンボルは、のちに聖母マリアに抱かれた幼いキリストのイメージに転用されたとされています。
いかがでしたか?
神さまと言えど、考え方は人間ですよね。
バラバラにされても復活するのは人間には不可能ですが。。
エジプトの神さまを身近に感じて頂けたら嬉しいです。